妻と一緒に車中泊を始めて3年目になります。最初は「毎食外食かな」と思っていたのですが、実際に旅を続けてみると、自分たちで料理することの大切さに気づきました。限られたスペースだからこそ、工夫が生まれる。そして、その工夫こそが、旅の思い出をより豊かにしてくれるんですよね。今回は、我が家が実践している車中泊料理のコツをお伝えします。
車中泊料理の魅力と現実のギャップ
妻と二人で始めた車中泊生活で気づいたこと
昨年の春、長野県の白馬村で初めて本格的な車中泊を経験しました。その時、妻が「毎回外食だと疲れちゃうね」と呟いたんです。私たちは若い頃、バックパッカーとして東南アジアを回っていた時代、宿の共有キッチンで地元の食材を使って料理するのが日常でした。その感覚が蘇ったんでしょう。
実は、車中泊での料理には、SNSで見かけるような華やかなイメージと、現実のギャップがあります。広々としたキャンピングカーのキッチンで、素敵な朝食を作る——そんな光景は憧れですが、私たちのミニバンは違います。助手席を倒し、簡易テーブルを出すと、調理スペースは畳1枚分もありません。でも、だからこそ面白いんです。
限られた空間で、限られた道具で、どうやって美味しいご飯を作るか。その工夫の過程が、旅の一部になっていくんですよね。
外食vs自炊、実際のコスト比較
正直に数字を出してみます。我が家の場合、夫婦で1日3食すべて外食すると、平均で6,000~8,000円かかります。特に観光地は割高で、白馬村では朝食だけで2,000円近くしたことも。一方、自炊の場合、同じ1日で1,500~2,500円程度に抑えられます。
ただし、コストだけが理由ではありません。むしろ、自分たちで調理することで、地元の食材を選ぶ楽しみが生まれるんです。朝、道の駅に立ち寄って新鮮な野菜を見つけたり、地元の卵を使ったり。そういった「選ぶ喜び」が、外食にはないんですよね。
月間で見ると、自炊で20日、外食で10日というペースなら、月間で30,000円程度の食費に抑えられます。年間36万円の節約になるわけで、その分を新しい目的地への移動費に回せる。いやはや、旅の自由度が格段に上がります。
車中泊料理に必須の道具と選び方
コンパクトで使える調理器具3つのポイント
車中泊での調理道具選びは、「コンパクト性」「多機能性」「安全性」の3点を意識しています。
ポイント1:コンパクト性
ミニバンの限られた収納スペースでは、かさばる道具は敵です。我が家は折りたたみ式のまな板(厚さ5mm、広げると30cm×20cm)を愛用しています。使わない時は、ファイルのように立てて収納できるんです。
ポイント2:多機能性
1つの道具で複数の役割を果たすものを選びます。例えば、ホットサンドメーカーは朝食だけでなく、夜間のおかずを温めるのにも使えます。シリコン製の折りたたみボウルは、調理にも食器にもなります。
ポイント3:安全性
ガスバーナーを使う際は、特に風対策が重要です。我が家は風よけパネル(アルミ製、3面式)を常備しています。狭い車内での火の使用は危険ですので、必ず車外で調理しています。
実際に愛用している調理道具たち
ポータブルガスバーナー(カセットコンロ対応)
価格:2,500~4,000円
我が家は「イワタニ ジュニアコンパクトバーナー」を使用しています。カセットガスを使うため、ガス缶の入手が簡単です。小型で風に強く、夫婦2人の調理には十分です。
ホットサンドメーカー(電気式)
価格:3,000~6,000円
12Vのカーインバーターで動作するタイプを選びました。朝食の調理時間が5分に短縮され、洗い物も少ないのが助かります。
折りたたみシンク(5L容量)
価格:1,500~2,500円
水の節約が課題なので、このシンクで食器を洗います。排水口がついており、処理も簡単です。
その他の必須アイテム
– シリコン製折りたたみボウル(3個セット、1,000円程度)
– 軽量ステンレス鍋(1.5L、1,500円程度)
– 木製カッティングボード(折りたたみ式、800円程度)
これらをすべて揃えても、総額で15,000~20,000円程度です。高価なガジェットよりも、工夫で対応する——それが我が家のモットーなんです。
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朝食編:ホットサンドメーカーで作るアレンジレシピ
基本のハムチーズサンド(調理時間:5分)
道の駅で購入した食パン、ハム、チーズをホットサンドメーカーに挟んで焼くだけ。バターを薄く塗っておくと、焦げ目がきれいに付きます。
ここで我が家が愛用しているのは、アレンジレシピです。前夜の残りの野菜(キャベツの千切り、ニンジンなど)をマヨネーズで和えて、サンドに挟みます。これで栄養バランスが格段に良くなるんですよね。
実は、初めてホットサンドメーカーを使った時は失敗しました。火力を強くしすぎて、中身が出てきてしまったんです。その時、妻が「弱火でゆっくり焼くんだよ」と教えてくれて、それ以来、毎回成功しています。
アレンジレシピ:ツナマヨサンド
ツナ缶とマヨネーズを混ぜ、スライスチーズと一緒に挟みます。ツナ缶は常温保存できるため、常に常備しています。朝の準備が簡単で、妻も気に入っています。
昼食編:火を使わない冷たい麺類
冷やし中華(調理時間:10分)
中華麺を前夜に茹でておき、朝冷蔵庫で冷やします。昼食時に、冷やした麺にタレ(醤油、酢、ごま油を混ぜたもの)をかけ、トマト、キュウリ、ハムなどをトッピングします。
火を使わないため、昼間の暑い時期に最適です。特に夏場、駐車場で調理する際は、ガスバーナーを使う気力が失せてしまいますからね。
そうめん(調理時間:8分)
ポータブルコンロで朝のうちに大量に茹でておき、冷やします。昼食時に冷たいめんつゆで食べます。薬味は、前夜に刻んだ大葉、ショウガ、ネギなど。
この料理で失敗したのが、水の温度管理です。真夏の車内に置いておくと、麺が温くなってしまうんです。今は、保冷ボックスに麺を入れ、氷を周りに置くようにしています。
夜食編:ポータブルコンロで作る温かい一品
簡単鍋焼きうどん(調理時間:15分)
冷凍うどんを鍋で温め、市販の鍋焼きうどんのタレを入れます。野菜(ニンジン、玉ねぎ、白菜など)を事前に切っておき、加えるだけ。卵も一緒に入れれば、栄養満点です。
初めてこれを作ったのは、新潟県の弥彦山近くでした。その日は気温が低く、温かい食事が心身に沁みました。妻も「こういう時の温かいご飯って、最高だね」と言ってくれて、その時から我が家の定番メニューになったんです。
ミニトマト鍋(調理時間:20分)
ミニトマト、豚肉、豆腐、野菜を鍋に入れ、コンソメスープで煮込みます。トマトの酸味が豚肉の脂を中和し、さっぱりとした味わいになります。
番外編:キャンプ場で仲良くなった人に教えてもらった裏技
昨年の秋、山梨県のキャンプ場で隣同士になった夫婦から教えてもらった裏技があります。それは、「ホイル焼き」です。
アルミホイルに野菜と肉を包み、ガスバーナーの上で直火で温めるというもの。火力を調整しやすく、洗い物も少ないんです。特に、キノコとバターを入れた「キノコホイル焼き」は、シンプルながら絶品でした。
その時、相手の方が「車中泊って、こういう工夫の連続なんですよね。だから楽しいんだと思います」とおっしゃったんです。その言葉が、今でも私たちの車中泊料理のモチベーションになっています。
車中泊料理で失敗しないための工夫と対策
限られた水と火力での調理の工夫
水の節約
車中泊では、積載できる水の量が限られています。我が家は1回の旅で20Lのポリタンクを2個持ち運んでいます。これで夫婦2人、3~4日間の食事と生活用水をまかなっています。
調理時の水節約のコツは、「一度の調理で複数の役割を果たさせる」ことです。例えば、野菜を茹でた後のお湯は、そのまま食器洗いに使います。米を研いだ水は、野菜の土落としに使うなど。
また、食器は「ぬるま湯で一気に洗う」方式にしました。温かい水を一度沸かし、その中で食器を洗い、最後に冷たい水でさっと流す。この方法で、1食分の食器洗いに必要な水は、わずか3L程度に抑えられます。
火力の工夫
ポータブルコンロの火力は、家庭用ガスコンロと比べて弱いです。そのため、「調理時間を長めに見積もる」ことが大切です。例えば、通常10分で煮える野菜なら、15分かけるくらいの気持ちで。
また、「圧力鍋」を導入しました。軽量タイプ(2L、1,500円程度)で、調理時間を大幅に短縮できます。特に、豆類や根菜類の調理に重宝しています。
夏場の食材管理と衛生管理のコツ
食材の保存
夏場は、食材が傷みやすいのが課題です。我が家は、保冷ボックス(容量25L、3,000円程度)を導入しました。朝、道の駅で氷を購入し、ボックスに詰めます。これで、昼食時まで食材を新鮮に保つことができます。
ただし、夜間は保冷ボックスの効果が薄れます。そのため、夜間は「すぐに傷む食材は避ける」という原則を設けました。具体的には、肉類は当日中に調理し、翌日に持ち越さないようにしています。
衛生管理
車中泊での食中毒は、深刻な問題です。特に夏場は注意が必要です。我が家は、以下の対策を実施しています:
- 調理前後の手洗い:除菌シートを常備し、調理前には必ず手を洗います。
- 食器の乾燥:食器を洗った後は、布巾ではなく「乾燥ラック」で自然乾燥させます。湿った環境は菌の繁殖地になるため。
- まな板の消毒:週に1度、熱湯で消毒します。
冬場の調理で気をつけるべきポイント
火の安全性
冬場は、暖を取るために調理時間を長くしがちです。しかし、ガスバーナーの使用時間が長いほど、一酸化炭素中毒のリスクが高まります。我が家は、「調理は必ず車外で行う」というルールを厳守しています。
また、ガスバーナーの周囲に「風よけパネル」を設置していますが、これが一酸化炭素を逆流させないかを常に意識しています。
水の凍結対策
真冬は、ポリタンクの水が凍ることがあります。そのため、夜間は水を車内に持ち込み、毛布で保温しています。また、朝の調理前には、ぬるま湯を作るために、少量の水を前夜に温めておくなどの工夫をしています。
車中泊料理に活躍するおすすめ商品
ポータブルコンロ・ガスバーナー
イワタニ ジュニアコンパクトバーナー
– 価格:2,800円前後
– 特徴:カセットガス対応、風に強い、軽量(約650g)
– 我が家の評価:★★★★★
このバーナーは、本当に優秀です。風対策がしっかりしており、山頂での調理でも安定しています。カセットガスの入手も簡単で、全国のコンビニで購入できるのが助かります。
ユニフレーム バーナーパッド
– 価格:1,500円前後
– 特徴:カセットガス缶の上に置いて使用、安定性向上
– 我が家の評価:★★★★
ガスバーナーの安定性を高めるアイテムです。鍋がぐらつかなくなり、調理がしやすくなります。
折りたたみ調理台・シンク
ロゴス 折りたたみウォータータンク
– 価格:2,500円前後
– 容量:5L
– 特徴:排水口付き、折りたたみ可能
このシンクは、本当に重宝しています。排水処理が簡単で、食器洗いの効率が格段に上がります。
ユニフレーム キャンプテーブル(小)
– 価格:3,500円前後
– サイズ:50cm×50cm
– 特徴:軽量アルミ製、折りたたみ可能
調理台として使用しています。高さが調整でき、立ったままでの調理が可能です。
実際に使ってみて良かった便利グッズ
シリコン製折りたたみボウル(3個セット)
– 価格:1,200円前後
– 特徴:かさばらない、様々なサイズ
調理にも食器にもなり、本当に便利です。我が家では、野菜の下準備、調理、食事という3つの段階で活躍しています。
アルコール除菌シート(大容量)
– 価格:800円前後
– 特徴:調理前後の手指消毒に最適
食中毒防止の観点から、必須アイテムです。毎回、調理前後に使用しています。
保冷ボックス(25L)
– 価格:3,000~5,000円
– 特徴:軽量、断熱性に優れている
夏場の食材管理に不可欠です。氷を毎朝購入することで、昼間の食材を新鮮に保ちます。
圧力鍋(軽量タイプ、2L)
– 価格:1,500~2,500円
– 特徴:調理時間の短縮、火力の弱さをカバー
ポータブルコンロの弱火力をカバーするために導入しました。豆類や根菜類の調理が格段に早くなります。
まとめ
車中泊での料理は、最初は「大変そう」と感じるかもしれません。実際、我が家も最初はそうでした。しかし、3年間の実践を通じて、気づいたことがあります。それは、限られた空間だからこそ、工夫が生まれ、その工夫が旅の思い出をより豊かにしてくれるということです。
高価なガジェットは必要ありません。必要なのは、「どうやって美味しく作るか」という工夫心だけです。夏場の水の節約、冬場の安全対策、季節に応じた食材選び——これらすべてが、旅の一部になっていくんです。
妻と一緒に、毎回新しい工夫を試しながら、日本中を旅しています。次の旅先では、どんな新しい料理に出会えるのか。そんな期待感を胸に、今日も車を走らせています。皆さんも、ぜひ車中泊での料理を通じて、旅をより深く楽しんでみてください。その時、限られた空間での調理が、こんなに充実していることに驚くと思いますよ。

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