妻と一緒に車中泊を始めて3年。訪れた場所は50カ所を超えました。バックパッカー時代の経験があるからか、野外での泊まりには比較的慣れていると思っていたんです。ところが、車中泊は想像以上に危険と隣り合わせなんだということに気づくまで、それほど時間はかかりませんでした。特に怖いのが、事故や病気で「命に関わる」リスクです。実は、車中泊で亡くなる方もいるんですよね。今回は、私たちが実際に経験した危ない場面と、その対策方法をお伝えします。これから車中泊を始める方、すでに楽しんでいる方も、ぜひ参考にしていただきたいです。
車中泊で起こりやすい健康リスクとは?
車中泊の最大の敵は、実は「見えない危険」です。快適そうに見える車内でも、私たちの体には想像以上のストレスがかかっています。特に注意すべき3つのリスクについて、詳しく説明します。
エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の危険性
エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢でいることで、足の深い静脈に血の塊(血栓)ができる病気です。飛行機の長時間フライトで有名ですが、実は車中泊でも起こりやすいんですよね。
私たちが初めてこの危険性を実感したのは、昨年の8月。長野県の白樺湖畔で3泊連続の車中泊をした時のことです。当時、妻が夜中に「ふくらはぎが痛い」と訴えてきました。最初は筋肉痛だと思ったんですが、翌朝になっても腫れが引かない。調べてみたら、エコノミークラス症候群の初期症状に該当していたんです。幸い、その日のうちに病院で検査を受けて、血栓はできていないとのことでしたが、いやはや、驚きました。
このリスクを避けるためには、1時間ごとに車を降りて歩く、寝ている間も足首を回す運動をする、十分な水分補給が必須です。特に高齢者や、もともと血液疾患がある方は要注意です。
一酸化炭素中毒と換気の重要性
これは本当に危険です。エンジンをかけたまま寝ると、排気ガスに含まれる一酸化炭素が車内に充満し、中毒症状を引き起こします。重症の場合、意識を失ったまま亡くなることもあるんです。
「そんなことはしないだろう」と思うかもしれません。でも、冬場に暖房をつけたまま寝たくなる気持ちは、本当によく分かります。私たちも最初の冬、群馬県の山中で「エンジンをつけたまま寝ようか」と真剣に考えたことがあります。気温が氷点下で、用意していた寝袋だけでは寒くて眠れなかったからです。
ただ、その時に思い出したのが「一酸化炭素中毒で亡くなった車中泊者のニュース」でした。結局、その夜は厚手のコートを重ね着して、寝袋に毛布を重ねることで対応しました。エンジンは絶対に切る。これは車中泊の鉄則です。
熱中症と低体温症のリスク管理
季節によって、全く異なるリスクが生まれます。夏場の熱中症は、特に気をつけるべき危険です。車内は想像以上に温度が上がります。昨年7月、岡山県のキャンプ場で経験したのですが、朝8時の時点で車内温度が35℃を超えていました。
一方、冬場の低体温症も怖いです。適切な防寒対策がないと、寝ている間に体温が奪われ、意識を失うこともあります。私たちは季節ごとに装備を完全に変えています。夏は通気性重視、冬は保温性重視で、妥協なく準備するようにしています。
実際に経験した危ない場面と対策方法
理屈だけでは分かりにくいと思うので、私たちが実際に経験した危ない場面と、その時にどう対応したかをお話しします。
換気不足で危なかった夜間の過ごし方
今から2年前の秋、新潟県の山奥で経験した出来事です。その日は雨が強く、窓を少ししか開けずに寝てしまいました。夜中に目が覚めると、なんだか気分が悪い。頭がぼんやりしていて、呼吸が浅くなっているような感覚がありました。
妻に「大丈夫?」と聞かれて、はじめて「これは危ないかも」と気づきました。すぐに全ての窓を開け、外の空気を吸いました。その時に初めて、換気がいかに重要かを身をもって知ったんです。
以来、私たちは常に最低2つの窓を開けたままにするルールを作りました。雨の時でも、窓の上部だけ開けるなど工夫しています。また、車内の湿度計を常備して、湿度が70%を超えないように監視しています。
長時間同じ姿勢による血栓症の予防法
先ほど触れた妻のふくらはぎの痛みから、私たちは「動く」ことの重要性を学びました。今では、泊まる時間帯に関わらず、最低でも2時間ごとに車を降りて歩くようにしています。
特に夜間は、懐中電灯を持って車の周りを数分歩くだけでも効果があります。また、寝る前と朝起きた時に、足首をゆっくり回す運動を1分間ずつ行っています。これは血流を促進し、血栓形成を防ぐのに有効です。
さらに、圧迫ソックス(医療用の弾性ストッキング)を着用することも検討しています。実際に医師から勧められたので、今冬から導入予定です。
エンジン始動時の一酸化炭素中毒対策
冬場、朝起きた時に「ちょっと暖房をつけたい」という誘惑に駆られることがあります。そんな時は、必ず窓を全開にした状態でエンジンをかけるようにしています。
また、私たちは一酸化炭素検知機を車内に常備しています。価格は3,000~5,000円程度で、ホームセンターやAmazonで購入できます。これがあるだけで、心理的な安心感が全く違います。
「大丈夫だろう」という油断が最も危ないんですよね。特に疲れている時や、寒い朝は判断力が低下しています。だからこそ、ルールと道具で自分たちを守るという姿勢が大切なんです。
車中泊を安全にするための必須アイテムと環境整備
安全な車中泊のためには、適切な装備と環境整備が不可欠です。私たちが実際に使用しているものを紹介します。
通気性を確保するグッズと設営方法
最も重要なのは、常に新鮮な空気が流通する状態を作ることです。私たちが使用しているのは以下のグッズです:
- 網戸カーテン(1,500~2,500円):窓を全開にしても、虫が入らないようにするもの。100均でも似たようなものが売られています。
- ベンチレーター(5,000~15,000円):車の屋根に取り付ける通気口。DIYで自分たちで取り付けることもできます。
- 小型の扇風機(2,000~4,000円):12V電源で動く車用の扇風機。空気を循環させるのに有効です。
実際の配置としては、運転席側の窓を開け、後部の窓からは網戸カーテンをつけて開けておくという「空気の流れ」を作ります。これにより、新鮮な空気が常に車内を通過する状態になるんです。
定期的な運動と休憩のスケジュール管理
私たちは、スマートフォンにアラーム機能を設定して、2時間ごとに「外に出て歩く」リマインダーを設置しています。最初は面倒に感じていたのですが、今では習慣化しました。
特に長距離移動の日は、走行2時間ごとに30分の休憩を設けるようにしています。その時に軽い運動(ストレッチ、散歩)を必ず行います。これにより、運転中の眠気も軽減されますし、健康リスクも減らせます。
また、夜間の寝る前に10分間のストレッチを欠かしません。ヨガマットを敷いて、足や腰を中心に丁寧に伸ばします。これが翌朝の目覚めを大きく改善しました。
季節別の温度管理と装備の工夫
夏場(6月~9月):
– 通気性を最優先
– 薄い寝袋(3シーズン用)
– 冷感マット(2,000~4,000円)
– 小型の扇風機は必須
冬場(11月~3月):
– 保温性を最優先
– 冬用寝袋(マイナス10℃対応)
– 厚めのマットレス(断熱効果がある)
– 毛布を複数枚
– 湯たんぽ(800~1,500円)
春・秋(4月・5月、10月):
– 中間的な装備で対応
– 温度調整ができる複数層の衣類
実は、季節の変わり目が最も危ないんです。気温が急変することがあるからです。昨年10月、群馬県の高地で「朝方が予想以上に冷え込んだ」という経験をしました。その時は、用意していた追加の毛布が役に立ちました。
車中泊初心者が知るべき安全ルールと心構え
最後に、これから車中泊を始める方に向けて、最も大切なルールと心構えをお伝えします。
駐車場所の選び方と危険な場所の見分け方
安全な車中泊の第一歩は、安全な場所を選ぶことです。避けるべき場所は以下の通りです:
- 河原や低い土地:豪雨時に水が溜まりやすく、最悪の場合、流される危険があります
- 人気のない夜間の駐車場:トラブルに巻き込まれるリスクがあります
- 排気ガスが溜まりやすい場所(トンネル口付近など)
- 強風が吹く山頂付近:車が揺れて眠れませんし、危険です
逆に安全な場所は:
– 公式な車中泊スポット(RVパーク、オートキャンプ場など)
– 道の駅(ただし、夜間の滞在が許可されているか確認が必須)
– 高めの土地で、周囲が見通せる場所
実は、私たちは場所選びで失敗したことがあります。昨年7月、岡山県である河原でテント的に車中泊をしたのですが、夜中に雨が降ってきました。幸い、大雨ではなかったのですが、もし豪雨だったら危なかったと今でも思います。以来、天気予報を必ず確認し、雨の予報がある時は河原を避けるようにしています。
夫婦で泊まる際の相互チェックと安全確認
私たちは、毎晩以下の「安全チェックリスト」を実行しています:
- 窓の施錠確認:外部からの侵入を防ぐ
- 換気状態の確認:窓が適切に開いているか
- 温度計・湿度計の確認:異常な数値がないか
- 一酸化炭素検知機の確認:正常に動作しているか
- 懐中電灯やスマートフォンの充電:緊急時に備える
- 相手の体調確認:違和感がないか、丁寧に聞く
特に大切なのが、最後の「相手の体調確認」です。妻が「何か変」と感じたことで、私たちは何度も危ない状況を回避できました。夫婦で泊まるからこそ、互いに相手を守ることができるんです。
緊急時の対応と連絡先の準備
万が一の時に備えて、私たちは緊急連絡先をスマートフォンに登録しています:
- 110番:警察(危険を感じた時)
- 119番:救急車(体調が悪い時)
- かかりつけ医:事前に旅先での医療機関を調べておく
- 家族の連絡先:妻の実家と私の実家
また、位置情報をGoogleマップで共有しておくことも有効です。何かあった時に、家族が私たちの場所を特定できるようにしています。
さらに、旅先での医療機関の場所を事前に調べておくことも大切です。特に地方の夜間は、医療機関が限られていることが多いです。
まとめ
車中泊は、本当に素晴らしい経験です。妻と一緒に日本中を旅して、毎晩異なる景色を眺めながら眠りにつく。そんな自由を手に入れることができました。
ただし、その自由には責任が伴うんですよね。安全に対する配慮なくして、楽しい車中泊は成り立たないんです。私たちが実際に経験した危ない場面を通じて、皆さんにお伝えしたかったのは、「車中泊は工夫と注意深さで、十分に安全にできる」ということです。
これからも、妻と一緒に安全を最優先にしながら、日本中の素晴らしい場所を訪れていきたいと思っています。皆さんも、ぜひ同じように、安全で快適な車中泊ライフを楽しんでください。

コメント