妻と一緒に日本中を車中泊で巡るようになって、もう3年になります。バックパッカー時代は海外の安宿で現地の人と語り合うのが好きでしたが、今は日本の自然の中で、ゆっくりと時間を重ねるのが何より心地よいんですよね。そんな中で、特に虜になってしまったのが信州です。北アルプスの雄大な山々、清廉な空気、そして何より訪れる度に新しい発見がある。今回は、これまで何度も足を運んだ信州での車中泊経験を踏まえて、本当におすすめできるスポットと、失敗から学んだ工夫をお伝えしたいと思います。
信州が車中泊に最適な理由
自然豊かで景観に恵まれた環境
信州の魅力は、何といっても自然の豊かさです。北アルプス、中央アルプス、南アルプスという日本を代表する山々に囲まれ、季節ごとに全く異なる表情を見せてくれます。
昨年の5月、妻と白馬村を訪れた時のことです。朝4時に目を覚まし、ミニバンの窓を開けると、雪をかぶった北アルプスがオレンジ色に染まっていました。その瞬間、「あ、この景色のために車中泊をしているんだ」と改めて感じたんですよね。高級ホテルではこうはいきません。自分たちのペースで、好きな時間に、自然と一体になれる。それが車中泊の最大の価値だと思うんです。
また、信州は標高が高いエリアが多いため、夏でも夜間の気温が下がります。これは快眠という点で大きなメリットです。私たちは真夏でも、信州の高原なら冷房なしでぐっすり眠れます。
道の駅やRVパークの充実度が高い
信州は道の駅の数が全国で最も多い都道府県の一つです。長野県内には100を超える道の駅があり、その多くが車中泊に適した設備を備えています。
私たちが特に重宝しているのは、トイレの清潔さと、駐車スペースの広さです。いやはや、驚きました。信州の道の駅は、本当に丁寧に管理されているんですよね。朝6時に清掃が入る施設がほとんどで、深夜に到着しても衛生的です。
さらに、ここ数年でRVパーク(車中泊専用の宿泊施設)も増えてきました。料金は1泊3,000~5,000円程度が相場で、トイレ、シャワー、電源が完備されています。完全な野営ではなく、ある程度の快適さを求める方には最適です。
信州の車中泊スポット厳選5選
白馬村周辺:北アルプスの絶景を堪能
白馬村は、北アルプスの麓に広がる標高約700mの高原地帯です。冬はスキーリゾートとして知られていますが、夏から秋にかけては、ハイカーや自然愛好家の聖地となります。
おすすめの駐車スポットは「道の駅 白馬」です。営業時間は24時間で、駐車料金は無料。トイレ、水道、ゴミ箱が完備されており、駐車スペースも広めです。ここから徒歩10分で白馬駅に行けるため、観光の拠点としても最適です。
昨年8月、私たちはここで2泊しました。朝日が山頂を照らす瞬間を見るために、朝4時に起床。ミニバンの窓から見える景色は、まさに絵画そのものでした。その後、妻と一緒に八方尾根の登山道を歩き、標高2,000m地点から見た景色は、今でも忘れられません。
ただし注意点があります。白馬村は夏でも夜間の気温が10℃近くまで下がることがあります。我々は初めて訪れた時、薄いタオルケット1枚で寝て、夜中に寒くて目が覚めてしまいました。今は季節を問わず、厚手の寝袋を積んでいます。
軽井沢・佐久エリア:高原の爽やかさを感じる
標高1,000m前後の軽井沢・佐久エリアは、東京からのアクセスも良く、高原特有の爽やかな気候が特徴です。避暑地として知られていますが、実は穴場の車中泊スポットが多いんですよね。
おすすめは「道の駅 軽井沢」です。営業時間は24時間、駐車料金は無料。施設内には温泉(入浴料800円)も併設されており、疲れた体を癒やすのに最適です。駐車スペースは約50台分あり、夏場でも比較的停めやすいです。
我々が特に好きなのは、この道の駅から自転車で15分ほどの「軽井沢タリアセン」という文化施設周辺です。夕方に散歩すると、白樺の林を抜ける風が本当に気持ちいいんですよ。妻も「この季節の軽井沢は、何度来ても飽きない」と言っています。
注意点としては、軽井沢は観光地のため、夏休みやGW期間は混雑することです。我々は2019年8月に訪れた時、朝8時に到着したにもかかわらず、駐車スペースが満杯で、近隣の駐車場に停めざるを得ませんでした。今は、事前に混雑情報をチェックしてから訪れるようにしています。
野辺山高原:星空観察に最適な立地
野辺山高原は、標高1,400m以上の高地にあり、夜間の光害が少なく、星空観察に最適なスポットです。天文台もあり、天体観測の聖地として知られています。
おすすめの駐車スポットは「道の駅 南牧村」です。24時間営業、駐車料金無料。ここから車で5分ほど走ると、さらに光害が少ないエリアに出ます。我々は懐中電灯を持たずに、星の光だけで周囲を確認できるほどの暗さに驚きました。
昨年10月、妻と一緒に天体観測アプリを使いながら、北斗七星やカシオペア座を探しました。都会では決して見られない天の川も、ここではくっきりと見えます。その時、妻が「こんなに星が見えるなんて」と呟いた一言が、今でも心に残っています。
実用的なアドバイスとしては、懐中電灯を赤色に設定できるものを用意することです。赤色の光は夜間視力を損なわないため、星空観察の邪魔になりません。また、10月以降は夜間の気温が0℃近くまで下がることがあるため、十分な防寒対策が必須です。
諏訪湖周辺:温泉施設との相性が抜群
諏訪湖は、長野県内最大の湖で、周辺には多くの温泉施設が点在しています。車中泊と温泉の組み合わせは、疲労回復という点で最高の相乗効果をもたらします。
おすすめの駐車スポットは「道の駅 下諏訪」です。24時間営業、駐車料金無料。ここから徒歩5分で、複数の温泉施設にアクセスできます。特に「下諏訪温泉 しもすわの湯」は、入浴料が600円と良心的で、源泉かけ流しの湯が特徴です。
我々は毎年秋に、この周辺を訪れるようになりました。理由は、秋の諏訪湖の景色が本当に美しいからです。湖面に映る紅葉、そして夜間のライトアップ。昨年11月に訪れた時、朝焼けの中で妻と一緒に湖畔を散歩しました。その時の静寂と美しさは、言葉では表現しきれません。
実用的な情報としては、諏訪湖周辺の温泉施設は、朝6時から営業しているところが多いということです。これにより、朝風呂を楽しむことができます。我々は毎朝6時半に温泉に浸かり、その後で朝食を摂るというルーティンを作ってしまいました。
上高地・乗鞍周辺:登山ベースとして活用
上高地は、北アルプスの玄関口として知られ、多くの登山者が訪れます。乗鞍高原も同様に、ハイカーの聖地です。これらのエリアは、登山ベースとしての車中泊に最適です。
おすすめの駐車スポットは「道の駅 奈川渡ダム」です。24時間営業、駐車料金無料。上高地へのバスターミナルまで、車で約30分です。乗鞍高原へは、さらに近いです。
我々は今年8月、このエリアで初めて本格的な登山を試みました。前日は道の駅で車中泊し、朝5時に出発。乗鞍高原から乗鞍岳(標高3,026m)への登山道を歩きました。体力の衰えを痛感しましたが、山頂から見た景色は、若い頃のバックパッキングで見た山々と同じくらい素晴らしかったです。
注意点としては、このエリアは標高が高く、天候が急変しやすいということです。我々は登山当日、朝は晴れていたのに、午後から急に雨が降ってきました。防水対策と、天気予報の確認は必須です。
信州車中泊で気をつけるべきポイント
季節による気温変化への対策
信州は、季節による気温変化が激しいエリアです。特に標高が高い地域では、夏でも夜間の気温が10℃以下になることがあります。
我々の失敗談ですが、初めて白馬を訪れた時(7月)、「夏だから大丈夫だろう」と軽く考えていました。結果、夜中に寒くて目が覚め、妻に申し訳ない思いをさせてしまいました。今は、季節を問わず、厚手の寝袋と追加の毛布を積んでいます。
実用的なアドバイスとしては、以下の通りです:
– 春(4月~5月):気温は10~20℃。薄手の寝袋では不十分。
– 夏(6月~8月):日中は25℃以上だが、夜間は10~15℃。必ず厚手の寝袋を用意。
– 秋(9月~11月):気温が急速に低下。冬用の寝袋を検討。
– 冬(12月~3月):夜間の気温が0℃以下になることも。冬用装備が必須。
また、断熱カーテンの設置も重要です。我々は窓用の断熱シートを貼り、さらに厚手のカーテンを取り付けました。これにより、車内の気温変化が緩和されます。
山道での走行と駐車スペースの確認
信州のアクセス道路の多くは、山道です。特に上高地や野辺山へのルートは、カーブが多く、道幅も狭いです。ミニバンのような大型車での走行には、注意が必要です。
我々は、事前に走行ルートをGoogle Mapで確認し、特に狭い区間では、対向車との離合ポイントを頭に入れてから走行するようにしています。また、ガソリンスタンドが少ないエリアもあるため、事前に給油しておくことは必須です。
駐車スペースの確認も重要です。道の駅の駐車スペースは、夏休みやGW期間に満杯になることがあります。事前に「駅長からのお知らせ」などで、混雑情報をチェックしておくと良いでしょう。
地元ルールとマナーの重要性
信州を訪れるなら、地元のルールとマナーを守ることは、絶対条件です。特に、自然豊かなエリアでの行動には、細心の注意が必要です。
我々が心がけていることは、以下の通りです:
– ゴミは必ず持ち帰る:道の駅のゴミ箱に捨てられないものは、自宅まで持ち帰ります。
– 騒音に気をつける:夜間の出入りは静かに。特に、朝早く出発する際には、エンジン音に注意。
– 立ち入り禁止区域に入らない:登山道以外への進入は、自然破壊につながります。
– 地元の人との挨拶:朝の散歩時に出会った地元の人には、必ず挨拶をします。
昨年、野辺山高原でのことです。我々が駐車していた場所に、地元の方が「ここは農業用地の近くなので、早朝の出発は控えてもらえますか」と優しく声をかけてくれました。その時、「信州の自然を守ることは、地元の人たちへの尊重につながる」と改めて感じました。
信州車中泊を快適にする実用グッズ
断熱性能の高い窓用カーテン
車中泊の快適性を左右する要因の一つが、窓からの熱や冷気の流入です。特に信州は気温変化が激しいため、断熱カーテンは必須です。
我々が使用しているのは、「断熱シート+厚手のカーテン」の組み合わせです。断熱シートは、ホームセンターで1,000~2,000円程度で購入でき、窓に貼り付けるだけです。その上から、遮光カーテンを取り付けると、さらに効果が高まります。
実用的なアドバイスとしては、運転席と助手席の窓には、吸盤式のサンシェードを使用することです。これにより、朝日で目が覚めることを防ぎ、プライバシーも守られます。我々は3,000円程度の製品を購入しましたが、3年以上使用しても劣化していません。
ポータブル電源とLEDランタン
信州での車中泊では、夜間の照明が重要です。特に、スマートフォンの充電や、調理時の照明が必要になります。
我々が使用しているのは、容量500Whのポータブル電源です。価格は50,000円程度と決して安くありませんが、以下の用途で活躍しています:
– スマートフォン、タブレットの充電(毎日)
– 電気ケトルでの湯沸かし(朝食時)
– ノートパソコンの充電(ブログ執筆時)
また、LEDランタンも欠かせません。我々は2,000~3,000円程度の製品を2個購入し、一つは車内の天井に固定、もう一つは持ち運び用としています。LEDなので消費電力が少なく、ポータブル電源でも長時間使用できます。
寝心地を左右するマットレス選び
車中泊の質を決める最大の要因は、寝心地です。不快な寝心地では、いくら景色が素晴らしくても、疲労が蓄積します。
我々は、厚さ10cmのマットレスを購入しました。価格は15,000円程度ですが、これにより、ミニバンのフロアの凹凸が気にならなくなりました。さらに、その上に薄いラグを敷くことで、快適性が大幅に向上しました。
実用的なアドバイスとしては、マットレスは「自分たちの体重に合った硬さ」を選ぶことです。我々は妻と体重が大きく異なるため、硬さ調整可能なマットレスを選びました。これにより、夫婦それぞれが快適に眠れるようになりました。
まとめ
信州での車中泊は、単なる宿泊方法ではなく、自然との対話、そして人生の豊かさを感じるための手段だと、我々は考えています。北アルプスの絶景、高原の爽やかな空気、地元の人との温かい出会い。これらすべてが、信州での車中泊経験を特別なものにしてくれます。
バックパッカー時代は、世界中を駆け巡ることが目的でした。しかし今は、一つの場所でゆっくりと時間を重ねることの価値を知っています。信州は、そうした「ゆっくりとした旅」に最適な場所です。季節ごとに異なる表情を見せてくれるこの地で、妻と一緒に、これからも新しい発見を探し続けたいと思っています。
もし皆さんが信州での車中泊を計画されるなら、ぜひこの記事を参考に、自分たちだけの特別な時間を作ってください。失敗も含めて、それらすべてが、かけがえのない思い出になるはずです。

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