妻と一緒に日本中を車中泊で旅するようになって、もう5年になります。若い頃はバックパッカーで世界を回っていましたが、今はミニバンを相棒に、ゆっくりとした旅のペースを楽しんでいるんですよね。これまでの経験を通じて、「どんな車が本当に車中泊に向いているのか」という疑問にぶつかることが何度もありました。今回は、実際に複数の車種に乗り、試してみた結果をお伝えしたいと思います。
車中泊に適した車を選ぶ前に知っておきたい基本知識
車中泊に必要な最低限のスペースとは
車中泊を快適に過ごすには、まず「寝るスペース」の確保が最優先です。一般的に、大人が横になるには最低でも長さ1.8m、幅1.2m程度の平らなスペースが必要とされています。妻と二人で寝る場合は、さらに余裕が必要ですね。
実は、私が最初に失敗したのがこの点なんです。3年前、中古の普通車セダンで車中泊に挑戦したことがあるのですが、後部座席を倒しても長さが足りず、結局、妻は運転席、私は助手席という不恰好な寝方をしていました。いやはや、あれは快眠とは程遠かったですよ。
その後、実際に何度も試乗してわかったのは、単なる「広さ」だけでなく、「床の平坦性」が重要だということです。段差があると、マットレスを敷いても寝心地が悪く、朝起きたときに腰が痛くなってしまいます。
燃費と快適性のバランスを考える
車中泊で日本中を旅するとなると、燃費は無視できない問題です。ガソリン代が月に5万円を超えるようでは、長期旅行は現実的ではありません。
ミニバンは一般的に燃費が10~12km/L程度、軽バンは15~18km/L程度です。一見すると軽バンが有利に見えますが、実際には旅のスタイルによって判断が変わります。高速道路をよく使う旅なら、広さと走行性能に優れたミニバンの方が、時間短縮による燃料削減につながることもあるんですよね。
維持費や保険料も重要な判断基準
車を購入する際、多くの人が本体価格にばかり注目しがちです。しかし、毎年の税金、保険料、メンテナンス費用を考えると、長期的には大きな負担になります。
軽自動車なら自動車税は年間10,800円、普通車なら年間30,500円~。さらに保険料も異なります。妻と相談した結果、私たちはミニバンの維持費を許容できる範囲と判断しましたが、これは個人の財務状況によって大きく異なります。
ファミリー向け!ミニバンが車中泊に最適な理由
ミニバンの圧倒的なメリット(広さ・設備・安定性)
現在、私たちが乗っているのはホンダ・ステップワゴンの2019年式です。この車を選んだ理由は、実にシンプルで、「広さ」と「使いやすさ」の両立だったんです。
ステップワゴンの荷室は、後部座席を全て倒すと、長さ約2.1m、幅1.5m近いスペースが確保できます。これなら、私たちが横並びで寝ることができます。さらに、床が完全にフラットになるのが素晴らしい。セレナやヴォクシーも同程度の広さですが、個人的にはステップワゴンの乗り降りのしやすさが気に入っています。
また、ミニバンは家族向けに設計されているため、天井も高く、車内で立ち上がることができるんですよね。雨の日や気温が極端に低い時期に、これほど重宝する機能はありません。
実際に乗っているステップワゴンやセレナの使い勝手
ステップワゴンは、静粛性が優れており、高速走行時も疲れにくいのが特徴です。妻も長時間の運転がしやすいとよく言っています。燃費は平均で11km/L程度で、月に2,000km走行する私たちの場合、月間ガソリン代は約15,000円~18,000円程度に収まります。
一方、セレナに乗っている知人によると、セレナは若干、燃費が悪い傾向があるものの、内装の質感が高く、長時間の乗車でも疲れにくいそうです。また、セレナはe-POWERというハイブリッド仕様があり、燃費重視なら選択肢になります。
両者とも、オプションで車中泊用のクッションマットやカーテンが用意されているのも、メーカーが車中泊の需要を認識している証だと思います。
ミニバン選びで失敗しないポイント
ミニバンは中古市場でも豊富に流通しており、比較的購入しやすいのが利点です。ただし、選ぶ際に注意すべき点があります。
まず、走行距離です。ミニバンは10万kmを超えると、エンジンやトランスミッションのトラブルが増える傾向にあります。私たちは購入時に走行距離7万km、年式2019年のものを選びました。
次に、前のオーナーの使用方法を確認することです。ファミリーカーとして丁寧に使用されていたか、それとも過酷な条件下で使用されていたかで、車の状態は大きく異なります。可能なら、整備記録簿を確認し、定期メンテナンスがきちんとされていたかを確認しましょう。
コンパクトで経済的!軽自動車・軽バンの活用法
軽バンが意外と快適な理由
軽バンと聞くと、配送業者が使う商用車というイメージが強いかもしれません。しかし、実は車中泊に非常に適した選択肢なんですよね。
スズキ・エブリイやダイハツ・ハイゼットなどの軽バンは、荷室の高さが約1.4m近くあり、天井まで手が届く高さが確保できます。また、床が完全にフラットで、段差がほとんどないのが特徴です。ミニバンと比べると幅は狭いですが、一人旅や夫婦二人での旅なら十分対応可能です。
知人が軽バンで北海道を一周した際、「思った以上に快適だった」と話していました。コンパクトなため、走行性能も良く、狭い道や山道でも不安なく走行できるそうです。
燃費の良さで長距離旅行に有利
軽バンの最大の魅力は燃費です。一般的に15~18km/L程度の燃費が期待でき、ミニバンと比べると1.5倍近く効率的です。月に2,000km走行する場合、ガソリン代は約10,000円~12,000円程度に抑えられます。
年間で考えると、ミニバンとの差は約36,000円~72,000円。この差は、旅のペースや目的地の選択肢に直結します。予算が限られている場合、軽バンは非常に現実的な選択肢だと思います。
軽自動車での工夫とDIY例
軽バンでの車中泊を快適にするには、限られたスペースを有効活用するDIYが重要です。
例えば、床にすのこを敷いて、その上に薄いマットレスを敷くだけで、かなり快適な寝床が完成します。私の知人は、ホームセンターで購入した木材(合計3,000円程度)を加工して、収納ボックスを自作していました。これなら、衣類や食料品をコンパクトに収納でき、限られたスペースを最大限に活用できます。
また、軽バンの窓にはカーテンやサンシェードが必須です。遮光性が低いと、朝日で目覚めてしまい、快眠が妨げられます。100均で購入したつっぱり棒とカーテンで、十分対応可能です。
本格的な車中泊を目指すなら!キャンピングカー・バンコンの検討
新車購入 vs 中古車購入の判断基準
本格的な車中泊を目指すなら、キャンピングカーやバンコン(ワンボックスカーを改造したもの)も選択肢になります。
新車のキャンピングカーは、500万円~1,000万円以上する高額な買い物です。一方、中古のバンコンなら200万円~400万円程度で購入できます。ただし、中古の場合は、改造の質や前のオーナーのメンテナンス状況を慎重に確認する必要があります。
私たちが本格的なキャンピングカーを選ばなかった理由は、シンプルに「維持費と駐車場代」です。キャンピングカーは、駐車場代が高く、RVパークの利用料も割高になります。また、改造されたエンジンやシステムのメンテナンスは、専門知識が必要で、修理費も高額になる傾向があります。
予算別のおすすめモデル
200万円前後の予算
中古のハイエースやキャラバンをベースにしたバンコンが狙い目です。この価格帯なら、基本的なベッド、キッチン、トイレが装備されたものが多いです。
400万円前後の予算
新車の軽キャンピングカーや、比較的新しい中古バンコンが選択肢になります。この価格なら、より快適な装備が期待できます。
600万円以上
新車のミドルサイズキャンピングカーが視野に入ります。シャワー、トイレ、キッチンなど、ほぼ移動式の家のような装備が可能です。
維持費の現実的な試算
キャンピングカーの年間維持費は、一般的な乗用車の1.5倍~2倍程度と考えておくべきです。
- 自動車税:50,000円~80,000円(普通車扱い)
- 保険料:月額8,000円~15,000円(年間96,000円~180,000円)
- 定期メンテナンス:年間30,000円~50,000円
- 駐車場代:月額5,000円~20,000円(RVパーク利用時)
合計すると、年間200万円~250万円の固定費がかかる可能性があります。これは、私たちの現在の旅のペースでは、現実的ではありませんでした。
意外と穴場!SUV・ワゴン車での車中泊のコツ
SUVのメリットと制限事項
SUVは、悪路走破性が高く、アウトドア志向の強い旅に向いています。トヨタ・ハリアーやマツダ・CX-5などは、荷室が広く、車中泊の候補になり得ます。
ただし、ミニバンと比べると、荷室の高さが低いのが難点です。大人が横になるスペースは確保できますが、天井が低いため、車内で立ち上がることが難しい場合が多いんですよね。また、SUVは燃費がミニバンより悪い傾向があり、平均で8~10km/L程度です。
ステーションワゴンの隠れた利点
実は、ステーションワゴンは車中泊の隠れた優良選択肢だと思います。トヨタ・カローラフィールダーやスバル・レヴォーグなどは、荷室が意外と広く、後部座席を倒すと、大人が横になれるスペースが確保できます。
ステーションワゴンのメリットは、セダンのような走行性能と、ワゴンの積載性を両立している点です。燃費もミニバンより良く、12~14km/L程度が期待できます。また、見た目がビジネスカーのようなため、駐車場に停めてもあまり目立たないという利点もあります。
荷室カスタマイズの工夫
SUVやワゴン車での車中泊を快適にするには、限られたスペースの活用が鍵になります。
例えば、荷室の高さが低い場合、マットレスを薄いものにして、その下に空間を作り、衣類やその他の荷物を収納するというアイデアがあります。また、サイドに収納ネットを取り付けることで、垂直方向のスペースを活用できます。
私の知人は、ワゴン車の両サイドに木製のボックスを自作し、その上にマットレスを敷くというカスタマイズをしていました。この方法なら、ボックス内に荷物を収納しながら、快適な寝床を確保できるんですよね。
車中泊初心者が陥りやすい失敗と対策
大きすぎる車を選んで後悔するケース
車中泊を始めたばかりの頃、「大きければ大きいほど快適だろう」と思い込む人は多いです。しかし、実際には大きすぎる車を選ぶと、別の問題が生じます。
例えば、大型キャンピングカーは、日本の多くの道の駅や駐車場に停められません。また、燃費が悪く、走行性能も劣ります。さらに、駐車場を探すのに時間がかかり、旅のストレスが増加することもあります。
私が知人から聞いた失敗談では、新車で1,000万円のキャンピングカーを購入した人が、わずか1年で売却してしまったそうです。理由は、「思ったより使わなかった」「維持費が予想以上に高かった」とのこと。結局、中古のミニバンに乗り換えたそうですが、こういった失敗は避けたいですよね。
燃費を甘く見積もった経験談
正直に告白すると、私も最初、燃費を甘く見積もっていました。購入時の説明では「平均燃費11km/L」と聞いていたのですが、実際には山道が多い旅で、平均9km/L程度に落ち込むことがありました。
月に2,000km走行する場合、ガソリン代の差は月額2,000円~3,000円。年間で考えると24,000円~36,000円の差になります。これは、旅の予算計画に大きな影響を与えます。
実際の燃費は、走行ルート、運転方法、季節によって大きく変動します。試乗の際に、複数の走行パターンで燃費を確認することをお勧めします。
実際に起きた予期しないトラブルと解決策
昨年の秋、妻と長野県を旅していた際、エアコンのコンプレッサーが故障してしまいました。気温が20℃近い秋晴れの日だったため、すぐに命に関わるトラブルではありませんでしたが、修理費は約150,000円でした。
この経験から学んだのは、「定期メンテナンスの重要性」です。購入前に、整備記録簿をしっかり確認し、前のオーナーがどの程度メンテナンスを行っていたかを確認することが重要です。
また、長期旅行に出かける前に、必ず点検を受けることをお勧めします。特に、タイヤ、バッテリー、エアコン、ウォッシャー液などは、旅の快適性と安全性に直結します。
あなたに最適な車を見つけるためのチェックリスト
旅のスタイル別・車選びの優先順位
夫婦二人での長期旅行を目指す場合
優先順位:広さ>燃費>快適性
ミニバンやステーションワゴンが最適です。広さがあれば、長期間の旅でも快適に過ごせます。
一人旅や短期旅行が中心の場合
優先順位:燃費>走行性能>維持費
軽バンやコンパクトカーが適しています。燃費が良く、走行性能に優れていれば、旅の自由度が高まります。
家族全員での旅を想定している場合
優先順位:安全性>広さ>快適性
大型ミニバンやキャンピングカーが候補になります。安全装備が充実し、全員が快適に過ごせる広さが必要です。
試乗時に確認すべき重要ポイント
- 床の平坦性:後部座席を倒した時、段差がないか確認する
- 天井の高さ:実際に車内で立ち上がれるか試す
- 視界の広さ:死角がないか、特に後方の視界を確認する
- 乗り降りのしやすさ:ステップの高さや、ドアの開口部を確認する
- 静粛性:高速走行時のエンジン音や風切り音を確認する
- 走行性能:加速、ハンドリング、ブレーキの感触を確認する
購入前に検討すべき追加要素
- 駐車スペース:自宅に駐車できるか、月額駐車場代はいくらか
- 維持費:年間の税金、保険料、メンテナンス費用を試算する
- 将来の売却:購入した車が、将来売却する際に需要があるか
- アフターサービス:購入先のディーラーやショップのサービス体制を確認する
- カスタマイズの余地:DIYでカスタマイズできるか、パーツの入手性は良いか
まとめ
車中泊に適した車を選ぶには、「広さ」「燃費」「快適性」「維持費」など、複数の要素をバランスよく考慮する必要があります。私たちがミニバンを選んだのは、これらの要素が、私たちの旅のスタイルに最も合致していたからです。
ただし、最適な車は、人によって、旅のスタイルによって大きく異なります。軽バンで十分満足している人もいれば、本格的なキャンピングカーを求める人もいるでしょう。重要なのは、自分たちのニーズを正確に把握し、試乗を通じて実際の使用感を確認することです。
若い頃、世界中をバックパッカーで旅した経験から学んだことがあります。それは、「最高の旅は、最高の装備からは生まれない。自分たちのペースを大切にし、その時々の出会いを楽しむことが重要だ」ということです。車選びも同じだと思うんですよね。完璧な車を探すのではなく、自分たちのペースに合った車を見つけることが、本当の意味で快適な車中泊につながるのだと確信しています。

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