妻と二人で日本中を旅する中で、私たちは当初、大きなミニバンでの車中泊を想定していました。ところが、ある時期にコンパクトカーでの旅を余儀なくされ、そこから予想外の発見がたくさんありました。今回は、コンパクトカーでの車中泊が実際にどの程度現実的なのか、そして思わぬメリットまで、率直にお話ししたいと思います。
コンパクトカーでの車中泊は現実的か?正直なところ
結論から申し上げますと、コンパクトカーでの車中泊は十分に可能です。ただし「快適さ」と「現実性」は別の問題なんですよね。
コンパクトカーのメリット:燃費と取り回しの良さ
コンパクトカーの最大の強みは、何といっても燃費の良さです。私たちが使用していた軽自動車は、高速道路で約18km/L、一般道で約15km/Lを記録していました。対してミニバンは高速でも12km/L程度ですから、長距離旅では大きな差になります。
月間の燃料代だけで見ても、3,000~5,000円の差が出ることもありました。これは年間にすると数万円。その分を旅の食事や体験に充てられるのは、バックパッカー時代の私たちにとって何よりの魅力でした。
また、取り回しの良さも想像以上に便利です。山道や狭い林道、地元の方しか知らないような穴場スポットへのアクセスが、ミニバンよりも格段に容易。いやはや、驚きました。この自由度の高さは、本当に旅の質を変えてくれるんです。
コンパクトカーのデメリット:限られた室内空間
正直に申し上げますと、コンパクトカーの室内空間は相当に限られています。軽自動車の場合、後部座席を倒しても荷室の長さは約160cm程度。身長170cm以上の方は、完全に足を伸ばすことができません。
私は身長172cmですが、最初の数泊は足を少し曲げて寝ていました。その後、工夫によって対応しましたが、最初はなかなか辛かったんですよね。横幅も同様で、軽自動車は約140cm程度。二人で寝ると、かなり密着した状態になります。
ミニバンとの比較から見えた意外な事実
ミニバンと軽自動車の両方で旅してみて気づいたのは、「広さ」だけが快適さの決定要因ではないということです。
確かにミニバンは室内空間が広く、寝返りも打ちやすい。しかし、その広さゆえに温度管理が難しく、冬場は暖房効率が悪い傾向にあります。一方、コンパクトカーは体積が小さいため、暖房効率が良く、実は冬場の車中泊では快適だったりするんです。
また、ミニバンは大きいため、狭い駐車場への入場を断られることもありました。実際、昨年の秋に訪れた某RVパークでは「ミニバン以上のサイズは利用不可」という看板を見かけ、唖然としたものです。その点、コンパクトカーならほぼすべての施設が利用可能。この自由度の差は、長期旅では無視できません。
コンパクトカー選びで重要な3つのポイント
コンパクトカーでの車中泊を検討されている方は、購入前に必ず確認すべき3つのポイントがあります。
室内高さと横幅:最低限必要なサイズの目安
室内高さは、最低でも120cm以上あることが理想的です。なぜなら、寝た状態で若干の荷物を上に置きたい場合や、朝起きて上半身を起こす際に、頭が天井に当たらないようにするためです。
横幅に関しては、140cm以上あれば、クッションを活用することで二人での就寝が可能になります。ただし、この場合でも「密着した状態」になることは覚悟が必要です。
私たちが使用していた軽自動車は、室内高さ約125cm、横幅約140cmでしたが、正直なところギリギリでした。購入前には、実際に車の中で寝転んでみることを強くお勧めします。
後部座席の倒し方:フルフラットになるかどうかの確認方法
これは非常に重要なポイントです。後部座席を倒した時に、段差が完全になくなるかどうかで、快適さは大きく変わります。
多くのコンパクトカーは、後部座席を倒しても運転席との間に段差が残ります。この段差が5cm以上あると、マットレスを敷いても凹凸が生じ、寝心地が悪くなるんですよね。
購入前には、実際に後部座席を倒してみて、荷室と座席の高さを確認することが必須です。ディーラーで試乗の際に、この点を質問しておくと良いでしょう。
荷室の形状:デッドスペースを活かすコツ
荷室の形状も重要です。特に、サイドの幅が均一かどうかを確認してください。
コンパクトカーの中には、ホイールハウス(タイヤの上部)の出っ張りが大きく、有効な寝床スペースが思ったより狭いモデルもあります。実際、私の友人が購入したコンパクトカーは、見た目の荷室サイズの割に、実際の就寝スペースは期待より小さかったと嘆いていました。
購入前に、メジャーで実測することをお勧めします。特に、ホイールハウスの出っ張り部分から反対側の壁までの距離を測っておくと、後々のDIY計画が立てやすくなります。
コンパクトカーで快適に寝るためのDIY工夫
コンパクトカーでの快適な睡眠は、DIYの工夫で大きく改善できます。私たちが実際に行った対策をご紹介します。
段差をなくす自作ベッドボード(材料費3,000円以下)
最初の課題は、後部座席と荷室の段差です。この段差を解消するため、私たちはベニヤ板を使った自作ベッドボードを作成しました。
材料は、ホームセンターで購入した厚さ12mmのベニヤ板(約1,500円)、断面が5cm×5cmの木材(約800円)、そして滑り止めシート(約500円)だけです。
作り方は簡単。ベニヤ板を荷室のサイズに合わせてカットし、木材で枠を作り、滑り止めシートを貼り付けるだけ。この板を後部座席の上に置くことで、ほぼ完全にフラットな寝床が完成します。
いやはや、この工夫だけで睡眠の質が劇的に改善されました。材料費も3,000円以下で済み、DIY初心者の私たちでも製作できたんです。
クッション・マットレスの選び方と配置のコツ
ベッドボードの上には、適切なマットレスが必須です。私たちは、高反発フォームマットレス(厚さ8~10cm)を使用しています。価格は5,000~8,000円程度ですが、これが寝心地を大きく左右します。
重要なのは、マットレスの配置です。コンパクトカーの場合、マットレスを敷くと両側に隙間が生じることが多いんですよね。この隙間には、クッションやタオルを詰めることで、寝ている最中に体が落ちるのを防げます。
また、枕も工夫が必要です。私たちは、背中を立てかけるためのクッション(2,000~3,000円)を用意し、朝の読書や軽い作業時に活用しています。
風通しと結露対策:100均グッズで実現できる工夫
車中泊で意外と厄介なのが、結露です。特に冬場、温かい車内と冷たい外気の温度差で、窓が結露してしまいます。これを放置すると、カビの原因になるんです。
対策として、私たちは100均の小型の除湿剤(約100円)を複数個、車内に配置しています。さらに、シリコンの吸盤フック(約100円)を使って、小型の網状ポーチに除湿剤を入れ、窓の近くに吊るしています。
また、就寝前に窓を少し開けて空気を入れ替えることも重要です。ただし、セキュリティのため、完全に開けるのではなく、5~10cm程度の隙間に留めるのがコツです。
さらに、断熱シート(ダイソーで購入、1枚約100円)を窓に貼ることで、結露の発生を大幅に減らせます。我が家では、このシートだけで結露が約70%減少しました。
コンパクトカー向けの車中泊スポット選びのコツ
コンパクトカーでの車中泊を成功させるには、スポット選びも重要です。
平坦な駐車場がある道の駅・RVパークの見分け方
まず確認すべきは、駐車場が平坦かどうかです。コンパクトカーは車体が小さいため、わずかな傾斜でも就寝時に体が転がってしまうんですよね。
道の駅を選ぶ際には、事前にGoogle Mapsのストリートビューで駐車場の様子を確認しています。これにより、傾斜の有無や駐車スペースの広さを把握できます。
また、RVパークのウェブサイトでは、駐車場の詳細情報が記載されていることが多いです。「平坦」「水平」という表記があれば、安心です。
狭いスペースでも安心できる施設の条件
コンパクトカーは、スペースが限られた施設でも対応できるのが強みです。ただし、以下の条件を満たしていることが重要です。
1. トイレが24時間利用可能
夜中に急にトイレに行きたくなることは珍しくありません。施設のトイレが夜間に閉鎖されていないか、事前に確認しましょう。
2. 夜間の照明がある
安全面から、駐車場に夜間照明があると安心です。
3. 周辺に街灯やコンビニがある
何か必要な物が出てきた時に、コンビニが近くにあると便利です。
4. 他の車中泊者がいる
複数の車中泊者がいる施設は、トラブルが少ないという傾向があります。
実際に泊まってみて「ここは難しい」と感じた場所
正直に申し上げますと、すべての道の駅が車中泊に適しているわけではありません。
昨年の夏、北海道の某道の駅に泊まった際、駐車場が砂利で、かなり傾斜していました。さらに、夜間に大型トラックが頻繁に出入りするため、振動で何度も目が覚めてしまったんです。結局、その夜は途中で別の場所に移動することにしました。
また、人気の観光地近くの道の駅は、夜間に騒音が多いことが多いです。特に週末は、若者グループが集まることもあり、安眠が難しい場合があります。
こうした失敗を避けるため、私たちは旅のブログやSNSで、実際の利用者の口コミを確認するようにしています。特に「夜間の騒音」「傾斜」「トイレの状態」といった情報は、非常に参考になるんですよね。
コンパクトカーだからこそ得られる意外なメリット
コンパクトカーでの旅を続けていると、単なる「妥協」ではなく、むしろメリットが多いことに気づきます。
燃費が良く、遠距離旅が経済的になる理由
先ほど触れた燃費の良さですが、これは単なる節約ではなく、旅のスタイルを大きく変えます。
ミニバンで月間5万km走行する場合、燃料代は約4万円。一方、コンパクトカーなら約2.7万円。月間1.3万円の差は、地方での食事や体験に充てられます。
さらに、燃費が良いということは、給油の頻度が少なくなり、結果として給油スポット探しの手間が減るんです。特に、山間部での旅では、この利点は計り知れません。
狭い林道や山道へのアクセスが容易
これは、本当に予想外のメリットでした。コンパクトカーは、ミニバンでは入れない狭い林道や、地元の方しか知らない山道にアクセスできます。
昨年、長野県の某林道を走った際、景色は素晴らしいのに、ほぼ誰もいない秘湯に到達できました。ミニバンではこの道は通行困難だったはずです。こうした「予期しない発見」が、旅の醍醐味なんですよね。
地元の方との距離感が近くなる現象
これは、本当に興味深い発見です。大きなミニバンで乗り付けるより、小さなコンパクトカーの方が、地元の方が声をかけてくれる頻度が高いんです。
「どこから来たんですか?」という気軽な会話が増え、地元のお勧めスポットや、ガイドブックには載らない情報を教えてもらえることが多くなりました。これは、車のサイズが小さいことで、「観光客」というより「旅人」に見えるからかもしれません。
実際、こうした会話から、本当に素晴らしい体験がいくつも生まれています。
初心者向け:コンパクトカー車中泊の準備チェックリスト
これからコンパクトカーでの車中泊を始めたいという方に向けて、準備のポイントをまとめました。
最低限必要な装備と代用品の工夫
必須装備:
– マットレス(8~10cm厚の高反発フォーム)
– 枕またはクッション
– 寝袋または毛布
– 除湿剤
– 懐中電灯またはLEDランタン
– 小型の扇風機(夏場)
– 暖房器具(冬場、ただし一酸化炭素対策が必須)
代用品の工夫:
コンパクトカーでの旅は、「工夫」が命です。例えば、枕がなければ、衣類を詰めた袋を枕代わりにできます。また、小型の扇風機の代わりに、車のエアコンを活用することも可能です。
実は、私たちが最初に購入した「高級な車中泊専用マットレス」(約15,000円)より、ホームセンターの一般的なマットレス(約6,000円)の方が、コンパクトカーには適していたんですよね。
予算別の快適化プラン
5万円プラン(最低限の快適化):
– 自作ベッドボード:3,000円
– 高反発マットレス:6,000円
– クッション類:3,000円
– 除湿剤・断熱シート:1,000円
– 懐中電灯・その他小物:2,000円
合計:約15,000円
10万円プラン(中程度の快適化):
上記に加えて、
– 小型ポータブル冷蔵庫:15,000円
– 小型の調理器具:5,000円
– より高品質なマットレス:15,000円
– 遮光カーテン:3,000円
合計:約53,000円
20万円プラン(高い快適化):
上記に加えて、
– ポータブル電源:80,000円
– LEDランタン・照明:5,000円
– 車用の小型エアコン:20,000円
– その他の装備:20,000円
合計:約178,000円
実際の失敗談から学ぶ「あると便利」なアイテム
最後に、私たちの失敗から学んだ「あると便利なアイテム」をご紹介します。
1. 網状の小型ポーチ
除湿剤を入れるのに便利。約100円。
2. 吸盤フック
ポーチを窓に吊るすのに活躍。約100円。
3. 段ボール箱
荷物の整理に不可欠。スーパーで無料でもらえます。
4. 防水シート
突然の雨漏りに対応。約500円。
5. 小型のポータブルスピーカー
朝の目覚まし代わりに。約2,000円。
実は、最初は「高級な装備ばかり」を揃えていたのですが、実際に必要なのは「シンプルで工夫できるアイテム」だったんですよね。この気づきが、旅のコストを大きく削減してくれました。
まとめ
コンパクトカーでの車中泊は、単なる「大型車の代替」ではなく、むしろ新しい旅のスタイルを提供してくれます。確かに、広さではミニバンに劣ります。しかし、燃費の良さ、取り回しの容易さ、地元の方との距離感の近さなど、思わぬメリットが満載なんです。
何より、限られた空間の中で工夫し、DIYで快適さを追求するプロセス自体が、バックパッカー時代の私たちにとって、何よりの喜びでした。これからコンパクトカーでの旅を考えている方は、ぜひ一度、この「工夫の旅」を体験していただきたいと思います。あなたの旅が、より豊かで自由なものになることを願っています。

コメント