妻と一緒に車中泊を始めたのは、子どもたちが独立した3年前のこと。バックパッカー時代の旅好きな血が騒いだのでしょう。最初は「何を揃えたらいいのか分からない」と、ネット情報に頼りっぱなしでした。しかし、実際に全国を回ってみると、「これは必須」「これは不要」が見えてくるんですよね。今日は、3年間で学んだ車中泊の準備について、失敗談も交えてお伝えします。
車中泊を始める前に知っておきたい基本知識
車中泊に必要なものの全体像
車中泊に必要なものは、大きく5つのカテゴリーに分けられます。睡眠環境、温度管理、生活設備、安全対策、娯楽・快適性です。
私たちが最初に陥った失敗が、「とりあえず買おう」という姿勢でした。ホームセンターで目についたものを片っ端から購入した結果、ミニバンの荷室が満杯になってしまい、いやはや、驚きました。実際に走ってみると、重くなりすぎて燃費が悪化し、月々のガソリン代が増えてしまったんです。
大切なのは、自分たちの旅のスタイルに合わせて、段階的に揃えること。最初は最小限の装備で試してみて、実際に必要なものが見えてから投資する方が、結果的に無駄が少なくなります。
季節や旅のスタイルで変わる準備物
北海道から沖縄まで、日本中を旅していると気づくのが、季節による準備の大きな違いです。
夏場の北海道での車中泊と、冬場の長野での車中泊では、全く異なる装備が必要になります。夏は通風と遮光が命ですし、冬は保温と断熱が最優先です。また、「温泉地を回る旅」と「キャンプ場中心の旅」でも、必要な道具は変わってきます。
私たちは当初、「一年中対応できる装備」を目指していましたが、それは現実的ではありませんでした。今は季節ごとに装備を入れ替える方式にしています。
初心者が陥りやすい「買いすぎ」の失敗
これは本当に大事なポイントなんですよね。初心者向けの記事を読むと「これもあると便利」「あれも必要」という情報が溢れています。でも、実際には使わない道具がほとんどなんです。
私たちも最初、「ポータブルシャワー」「車用冷蔵庫」「電動エアベッド」など、高価なグッズを次々と購入しました。しかし、1年使ってみた結果、実際に活躍したのは3割程度。残りの7割は、ほぼ使用されないまま、貴重な車内スペースを占領していました。
初心者の方には、まず月5,000~10,000円程度の予算で最小限の装備を試してみることをお勧めします。その後、実際の使用経験から「本当に必要なもの」が見えてくるはずです。
睡眠環境を整える必須アイテム
マットレス・敷布団選びのコツ
車中泊の快適さを左右する最大の要因が、睡眠環境です。硬い車の床の上で眠るのは、想像以上にストレスになります。
私たちが使っているのは、高反発ウレタンマットレス(厚さ8cm)です。価格は8,000~15,000円程度。最初は「エアベッド」も検討しましたが、パンクのリスクと、毎回の空気入れの手間を考えると、固いマットレスの方が実用的だと判断しました。
マットレスを選ぶ際の重要なポイントは、車内のサイズに合わせてカットできるかどうか。ミニバンの荷室は標準的な長さと異なることが多いため、オーダーカットに対応している業者を選ぶと後々の後悔が減ります。私たちは東京の寝具メーカーに依頼し、ミニバン専用のサイズにカットしてもらいました。費用は追加で3,000円程度でしたが、その価値は十分ありました。
枕とシーツ・寝袋の選択基準
枕は、自宅で使っているものを持ち込むのが一番です。わざわざ車中泊用に購入する必要はありません。ただし、シーツは速乾性のあるものを選ぶことが重要です。
私たちは吸湿速乾素材のシーツを使用しており、朝の湿度対策に役立っています。価格は3,000~5,000円程度で、通常のシーツと大きな差はありません。
寝袋についても、季節によって使い分けています。夏場は軽量のシーツ型寝袋(2,000~3,000円)、春秋は中厚のもの(5,000~8,000円)、冬場は高機能な寝袋(15,000~30,000円)を用意しています。冬用の寝袋は、快適温度が-10℃程度のものを選ぶと、日本国内での冬場の車中泊にはほぼ対応できます。
車内の遮光・遮熱対策グッズ
朝日で目覚めるのは気持ちいいものですが、真夏の車内は50℃を超えることもあります。遮光対策は、睡眠の質を大きく左右します。
私たちが使っているのは、銀色のサンシェード(1,500~3,000円)と、車用の遮光カーテン(3,000~5,000円)の組み合わせです。特にフロントガラスと側面窓への対策が重要です。
失敗談として、最初は100円ショップのアルミシートで対応しようとしていました。しかし、走行中に剥がれたり、毎回の着脱が面倒だったりで、結局は専用品に買い替えることになりました。安物買いの銭失いとはまさにこのことですね。
快適さを左右する温度管理アイテム
夏場の暑さ対策(扇風機・サーキュレーター・断熱シート)
夏の車中泊で最も重要なのが、空気の流れです。窓を開けるだけでは、熱がこもったままになります。
私たちが愛用しているのは、12V対応のサーキュレーター(5,000~8,000円)です。これを車内に設置すると、外からの空気が効率的に循環し、体感温度が3~5℃低下します。ポータブル電源から直接給電できるタイプを選ぶと、エンジンをかけなくても使用できるため、燃費や騒音の面でメリットがあります。
また、断熱シート(2,000~4,000円)をフロントガラスと側面窓に貼ることで、外からの熱の侵入を30~40%削減できます。施工は少し手間がかかりますが、一度貼ると1シーズン持ちます。
冬場の寒さ対策(電気毛布・湯たんぽ・断熱材)
冬場の車中泊は、本当に大変です。特に北日本での1月~2月の気温は、時に-10℃以下になります。
私たちが重宝しているのは、ポータブル電源(20,000~50,000円)と電気毛布(3,000~8,000円)の組み合わせです。電気毛布は消費電力が少ないため、ポータブル電源でも長時間使用できます。
ただし、ポータブル電源は初期投資が大きいため、最初は湯たんぽ(1,000~2,000円)で対応するのも良いでしょう。寝る前にお湯を入れて寝袋に入れると、夜中の冷え込みをかなり軽減できます。
さらに、車の床に断熱材(アルミ製、3,000~5,000円)を敷くと、地面からの冷気を防ぐことができます。これは意外と効果的で、マットレスの下に敷くだけで、体感温度が2~3℃変わります。
季節別の必要装備と実際の使用感
春秋は比較的温度管理が簡単です。軽いシーツと薄手の寝袋があれば対応できます。
夏場は、サーキュレーターと遮光対策が命です。私たちは6月~9月、毎週末のように北日本や高地を旅していますが、この装備があれば、かなり快適に過ごせます。
冬場は、電気毛布とポータブル電源の投資が必須です。妻は冷え性なので、冬の車中泊を快適にするために、この装備には惜しみなく投資しています。実際に12月~2月に東北や北海道を旅した際、この装備がなければ、おそらく旅を続けられなかったでしょう。
日中の過ごし方を充実させるアイテム
ポータブル電源の選び方と容量の目安
ポータブル電源は、車中泊ライフの質を大きく変えるアイテムです。しかし、選び方を間違えると、無駄な出費になります。
容量の目安としては、以下を参考にしてください:
– 最小限(5万円程度の予算):5,000mAh程度。スマートフォン充電程度
– 中程度(15万円程度):20,000~30,000mAh。ノートパソコンや小型家電も対応
– 本格的(30万円以上):50,000mAh以上。冷蔵庫や電気毛布も長時間使用可能
私たちが使っているのは、容量25,000mAhのポータブル電源(約40,000円)です。これで、ノートパソコン、スマートフォン、電気毛布、サーキュレーター、小型冷蔵庫などを、1日程度なら問題なく使用できます。
選ぶ際の重要なポイントは、出力ワット数です。AC出力が1,000W以上のものを選ぶと、ほとんどの家電に対応できます。
照明・ランタンの種類と使い分け
車中泊での照明は、意外と重要です。夜間に本を読んだり、調理をしたりする際に、十分な明るさが必要になります。
私たちは複数の照明を使い分けています:
– LEDランタン(2,000~5,000円):全体照明として、天井に吊るしています
– 懐中電灯(1,000~3,000円):移動時や緊急時用
– USB充電式スタンドライト(2,000~4,000円):読書やパソコン作業用
特にLEDランタンは、電池式と充電式の両方を用意しています。電池式は万が一の時のバックアップ、充電式は日常使用といった具合です。
テーブルやチェアなど快適性を高めるグッズ
車内での時間を快適にするために、簡易的なテーブルと椅子は欠かせません。
私たちが使っているのは、折りたたみテーブル(3,000~5,000円)と折りたたみチェア(2,000~4,000円)です。これらは、車の側面に出して使用します。朝食を食べたり、妻がスケッチブックに絵を描いたりする際に重宝しています。
DIY好きな私は、木材を使ってオリジナルのテーブルも作成しました。コストは2,000円程度でしたが、ミニバンのサイズに合わせたカスタマイズが可能で、なかなか使い心地が良いです。
衛生管理・生活に欠かせないアイテム
トイレ・排水対策(ポータブルトイレ・排水タンク)
これは、多くの初心者が見落とすポイントなんですよね。車中泊での最大の課題が、トイレと排水です。
夜間に外出するのは危険ですし、毎回コンビニに行くのも現実的ではありません。私たちは、ポータブルトイレ(5,000~15,000円)を導入しています。これは、プラスチック製の便座で、下部に専用のバッグやタンクを装着するタイプです。使用後の処理は、指定の場所で適切に行う必要があります。
排水については、ポータブル排水タンク(3,000~8,000円)を用意しています。洗い物の水や、簡易シャワーの水などを一時的に貯めておき、キャンプ場やRVステーション(全国約200箇所)で処理します。
洗面・シャワー設備の工夫
毎日のシャワーは難しいですが、最低限の洗面は必要です。
私たちは、折りたたみ式のウォータータンク(2,000~4,000円)と、簡易シャワーヘッド(1,000~2,000円)を使用しています。温泉地での旅の場合は、温泉に入浴してシャワーの代わりにしています。
また、ウェットシートやドライシャンプー(500~1,500円)も常備しており、どうしても水が使えない時の応急処置として活躍しています。
調理・食事に必要な最小限の道具
毎回外食するのは経済的ではありませんし、自炊の時間も旅の大切な思い出になります。
必要な調理道具は、実は意外と少ないです:
– 小型ガスコンロ(2,000~4,000円)
– 鍋・フライパン(各1,000~2,000円)
– カトラリーセット(1,000円)
– まな板・包丁(各500~1,500円)
私たちは、これらをコンパクトなボックスに収納しており、毎回の出し入れが簡単です。食材は、旅先の道の駅やスーパーで調達しています。
安全・防犯対策の重要アイテム
車内の防犯グッズと施錠の工夫
車中泊での防犯は、本当に重要です。特に人里離れた場所での夜間は、不安がつきものです。
基本的な対策としては:
– ドアロック補助具(1,000~3,000円):純正ロックに加えて、追加のロック機構を装着
– 防犯ステッカー(500~1,000円):「防犯カメラ作動中」などのステッカーを貼る
– 懐中電灯と防犯ブザー(各1,000~2,000円):緊急時の対応
私たちは、人気のない場所では、必ずドアを内側からロックし、寝る前に窓も全て確認します。また、貴重品(パスポート、現金、クレジットカード)は、車内の見えない場所に隠しています。
緊急時の対応グッズ
車中泊中の急病や事故に備えて、救急箱(2,000~5,000円)は必須です。包帯、消毒液、痛み止め、胃薬、風邪薬などを常備しています。
また、ジャンプスターター(5,000~10,000円)も用意しており、バッテリー上がりの際に重宝しています。
走行中の安全確認アイテム
これは車中泊というより、一般的な車の安全対策ですが、ドライブレコーダー(5,000~15,000円)は導入をお勧めします。万が一の事故の際に、証拠として機能します。
予算別・段階的な準備プラン
最小限の予算で始める場合(5万円程度)
車中泊を試してみたいという方向けのプランです:
- マットレス:8,000円
- 寝袋・シーツ:5,000円
- 枕:2,000円
- 遮光カーテン:3,000円
- サンシェード:2,000円
- 懐中電灯:1,000円
- 簡易テーブル・チェア:5,000円
- 調理道具一式:5,000円
- ウェットシート・その他消耗品:3,000円
- 防犯グッズ:3,000円
合計:約37,000~50,000円
このプランで、基本的な車中泊は十分に可能です。季節は春秋に限定し、温泉地での旅を中心にすると、さらに快適になります。
中程度の快適さを目指す場合(15万円程度)
より快適な旅を目指す方向けです:
上記の基本セット(50,000円)に加えて:
– ポータブル電源(20,000mAh):30,000円
– LEDランタン:3,000円
– 電気毛布:5,000円
– 簡易シャワー・ウォータータンク:5,000円
– ポータブルトイレ:8,000円
– サーキュレーター:6,000円
– 断熱シート:3,000円
– その他小物・予備:15,000円
合計:約125,000~150,000円
このレベルになると、春から秋まで、ほぼ全国で快適に過ごせます。
本格的に快適化する場合(30万円以上)
本気で車中泊ライフを楽しむ方向けです:
中程度セット(150,000円)に加えて:
– 高容量ポータブル電源(50,000mAh以上):50,000~80,000円
– 小型冷蔵庫:20,000~40,000円
– 高機能な寒冷地対応寝袋:25,000円
– 排水タンク・ポータブルトイレのグレードアップ:15,000円
– 防犯カメラ・ドライブレコーダー:20,000円
– 本格的なDIY改装(棚、収納など):50,000円以上
合計:300,000円以上
このレベルになると、冬場の北日本や、長期の旅も快適に対応できます。
実際に使ってみてわかった「あると便利」なアイテム
意外と活躍する小物たち
予想外に役立っているアイテムが、いくつかあります:
- ネットバッグ(500~1,500円):天井に吊るして、小物を収納。スペース効率が良い
- マグネット式フック(500~1,000円):金属部分に貼り付けて、タオルやバッグを掛ける
- ジップロック各種(500円程度):食材の保存、小物の整理に大活躍
- アロマディフューザー(2,000~3,000円):車内の匂い対策に意外と重要
特にアロマディフューザーは、妻が強く推奨しています。車中泊の夜間は、独特の匂いがこもることがあり、これがあると随分改善されるとのことです。
季節ごとに重宝したグッズ
- 春秋:虫よけスプレー、網戸(窓用)
- 夏:冷感タオル、うちわ、扇風機
- 冬:湯たんぽ、厚手の靴下、ホッカイロ
特に夏の冷感タオルは、寝る前に首に巻くと、体温が下がり、寝付きが良くなります。
失敗して不要だったもの
正直に申し上げると、以下のアイテムはほぼ使用していません:
- 電動エアベッド(25,000円):パンクのリスク、毎回の空気入れの手間
- 車用冷蔵庫(35,000円):電力消費が大きく、ポータブル電源がすぐ空になる
- ポータブルシャワー(8,000円):温泉地での旅が中心なので、出番がない
- 複数の調理器具:結局、ガスコンロと鍋だけで十分
これらの教訓から、「本当に必要か」を何度も問い直すことの大切さを学びました。
まとめ
車中泊に必要なものは、旅のスタイルや季節によって、大きく異なります。最も重要なのは、自分たちの実際の使用経験から、本当に必要なものを見極めることです。
初心者の方には、まず最小限の装備(5万円程度)で試してみることを強くお勧めします。その後、実際の旅の中で「これがあれば、もっと快適だな」という気づきが生まれるはずです。そこからが、本当の意味での車中泊ライフの始まりなんですよね。
バックパッカー時代の私たちは、限られた荷物で世界中を旅していました。その経験が、今の車中泊ライフにも活きています。大切なのは、物の多さではなく、その時間の質。妻との会話、旅先での出会い、新しい景色との邂逅——これらが、本当の豊かさだと思うのです。
皆さんも、自分たちのペースで、自分たちに合った車中泊スタイルを見つけていってください。その過程で、新しい発見や喜びが、きっと待っていますよ。

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